悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
サブさんと反対側の端に座る柳が、さっき店員さんが置いていってくれたメニューをあたし達に手渡す。


「ほれ。俺はもう決まってるからいいよ」

「大崎くん、何食べるの?」

「マスター特製オムライス。卵とろとろでデミグラスソースも最高に美味いの」

「そうなんだぁ! 私も同じのにしようかな~」


猫なで声を出し、ラブラブ光線を発射しているリカはさておき、あたしと亜美はメニューに目を落とす。

うーん、写真は載ってないけど名前だけでどれも美味しそう。


「どれにしよう……ひよちゃん決めた?」

「ううん、まだ迷い中。ねぇ、どれがオススメ?」

「全部」


あたしの問いに、しれっと答える柳にしかめっつらをしていると。

涼平くんが笑いながら、あたし達が見ているメニューを覗き込むようにして、テーブルに身を乗り出す。


「たしかにどれも絶品なんだけど、俺のオススメはね──」


──ガタッ!

突然あたしの右隣で、椅子が大きな音を立てた。


テーブルに身を乗り出したまま固まる涼平くん。

皆が押し黙り、亜美に視線が集中する。

彼女は怯えたように肩をすくめ、椅子の背もたれにピタッと背中をくっつけて硬直していた。

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