荘(仮)
「喧しい」
「真兎、そんなに面倒臭がるな」
「…はい。お父さん」
「あなた〜こっちのハンバーグも、美味しそうにできたわ〜」
「おお、綾女の手作りかい!」
「あなたのお手製には適いませんけど〜」
「…よかったら、私も」
「おお、真兎もかい?」
「採点してもらいたいから」
「愛情を食べてほしいから〜」

 なんてハーレムだ。
 でもこれ、親子の会話。似たような会話を松永夫妻もしている時がある。
 これはもしかして常識なのか?
 そんなのいやだなあ。
「しかし随分と盛り上がったね。まさかこんな大人数で夕飯だなんて」
「でも楽しいですよ〜」
「遅刻もしていない私たちが食事を作るのに、まだ納得していないんだけど」

「おいピーナッツ! ハンバーグ追加!」
「木でも噛ってろドブ鼠」
「こちらも追加二つです」
「オイル飲め。」
「なんて態度の悪い姉ちゃんだ」
「セクハラで訴えます松永先生」

「ああ、喧しい煩い」
「でも、ちゃんと作るのね〜」
「……料理は嫌いじゃない」
「ふふふ、血は争えないな」
「いつかお父さんを越えるのが夢だから」

「夢語んのはいいが、さっさと作れよ〜」

 空気の読めないネズミだ。
 暖かな家族の雰囲気に土足で無遠慮に上がり込んだ。
 まあ、当然真兎が黙っていないわけで。

「てめえの口に生肉放り込むぞ野良ネズミ!」
「せめてハムスターといえげっし類!」
「脳みそまでネズミサイズだな。兎は乳歯目だ」
「???」

 違いがわからないようだ。哀れなネズミ。
 事あるごとに火花を散らす犬猿を通り越して二周する仲の二人は、言葉を売りに売る。
 バーゲンセールのような口喧嘩は。

「よし殺す。動くんじゃねえ柿のタネ!!」
「潰してやるよドブネズミ!」

 ちなみに。
 夏摘→なつ→ナッツ
 らしい。りすの考えることはわからない。
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