荘(仮)
「カオス過ぎる」
 阿鼻叫喚なんて生温い。
 死屍累々で死者が歩くホラーも裸足で逃げ出すほどの混沌だ。
 アンデッドの十倍奴らのほうが恐い。悪質的な意味で。
「止めなくていいの?」
「止まると思うのか?」
 …無理だと答えた。
 遠い場所で広がるお祭騒ぎはテンポを外した盆踊り。
 ロックでメタルでワルツでジルバでパンクな踊り。
 しかし――
「楽しそうだな」
 どんなにメチャクチャでも
 どんなに常識外れでも
 どんなに大馬鹿な集まりでも

 みんな、楽しそうだった。

 だからか。遠くから、見ているからか。
 どうしても現実味が湧かない。
 こんな遠くにいることが
 自分にとって普通だから。
「何しょげてやがる」
 ――しぱーーーん!!
「いっっっつ!??」
 よ、よりによって乙女の顔に平手を落とすか!?
 理由を問えば、答えは一つ。
 落としやすいから。
 これで決まりだ。
 …いつまでも膝枕されている方も悪いとは思うけど。

「塞ぎ込んでいる警備員に、罰ゲームを与えよう」
 とてつもない有り難迷惑だ。
 これが罰だ。
 そういって、彼は一画を指差した。

 どこかで見た場所だった。
 そこに集まった人たちは、ただ一ヶ所を集中して見ていた。
「…この穴はなんだい?」
「お嬢が叩きだした跡らしいぜお父さん?」
「先生、注意しなくていいんですか〜?」
「俺は学校の教師であって、わざわざ守備範囲外で活動することもないだろう」
「素直に恐いといいなさい」
「うむ。恐い。助けてくれ雲雀」
「子供かアンタ」
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