荘(仮)
 時刻は進んでハンバーグ事件から一日。土曜日は休みの時間。
 だというのに、崇は頭を抱えて唸っていた。
 別に熱があるわけではない。頭痛の種が傷みだす前にどう刈り取るか、を考えていた。自分のではないが。
「あなたが悩むなんて珍しいこともあるわね」
「人を能天気みたいに言うな」
 彼の愛妻、雲雀がお茶を汲んできた。
 見れば二人とも同棲中の学生といっても通じるほど若く、いちゃついている。
 単にそれがしたいだけなのか、と疑う。
「でもあなたは考える前に行動でしょ? 動かないと始まらない」
「……それもそうだな」
 じっとしているくらいならじたばたしろ、それが自他供に推奨するスローガンだ。
「さっそく相談に乗ってくれ」
「いいわよ」
 二つ返事だった。

 それを少し後悔した。
「あの部屋住人の更正か」
「そこまですする必要もないが、このままでは俺もやられる」
 主に担任教師の懇願で。
 なんとかならないか、と言ってすぐ返ってくるなら教師はいらない。

「多分なるわ」

「だよな、やっぱり無……え?」
 教師は廃業のようだ。
「あの、雲雀さん。今なんと?」
「多分なんとかなる。一時的で、確証もないけど」
 それでも何も案が出せないよりましだ、この時崇はそう思った。
「で、どうするんだ?」
< 35 / 40 >

この作品をシェア

pagetop