叩いても叩いても僕は君の世界を変えられない
叩いても叩いても僕は君の世界を変えられない


「いってきます」


そう言って、私がパンプスをはくと、


「うん」


と、パソコンの画面を見たままキミは返事をする。


「カーテンくらい開けなよ」


バタン、と1DKの部屋の扉を私は閉めた。



昨日はパソコンの前で寝たのかな。

それともこれから寝るのかな。



そんなことを考えながら、地下鉄の駅へと向かった。



私はJRユーザーではなくて良かったと思う。

朝日のまぶしさは通勤の邪魔だから。



いつも降りる駅は、比較的新しいけど、レンガ調の壁はくすんだ色をしているし、

壁と床のつなぎ目には汚れた水が溜まっている。



職場に一生着きませんように、と頭で唱えながらこの通路を歩き、

仕事用の自分を形成する。

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