叩いても叩いても僕は君の世界を変えられない
高卒で今の会社に就職した。
それなりの業務量に伴い、それなりの存在意義は感じられるが――。
「絶対怒られるわぁ。行きたくなーい」
「でもあの会社、受付超美人じゃん」
「うーん、エロさが足りねーんだな」
騒がしい営業マンたちに囲まれたこの空間。
毎日、残りものの酸素しか回ってこないかのよう。
「中野ちゃん、MTGの資料どんな感じ?」
「完成してますよ」
「さすが! 助かる~」
そんな私に笑いかけるのは、営業の山崎さん。
私は営業成績トップの彼の他、3人の営業マンの事務を担っている。
「お礼に今度ご飯おごっちゃうよ」
「あはは。次はスケジュールに余裕持たせて下さいね」
「うぅ、スルーされたー」
山崎さんは私を気にいってくれているらしい。
社交的ではない私をよくランチや飲み会に誘ってくれる。
定時になり席を立つと、
山崎さんに「そいえば最近、彼氏とどう?」と聞かれたため、笑顔だけを返しておいた。
「お前そこ触れんなって。あいつの男、ヒモらしいから」
「引きこもり系ニートって噂だし」
同僚たちのひそひそ声をBGMに、私は地下鉄へと向かった。
今日も、疲れた。