Sting


『…爽太には言ってませんよ。』


その言葉にほっとすると同時に申し訳なさが押し寄せてきた。あれから彼がどういう人生を送ってきたのか、傷つけることになってしまった私をどう思っているのか、知りたいようで知りたくない。


「迷惑ばかりかけた上に、現実から逃げてしまってごめんなさい。」


今更どの面下げて顔合わせてるんだ、って思われてるような気がして頭を上げれない。少なくとも彼らの兄とご両親には合わせる顔がない。


『ほら優太言った通り。ゆきちゃんは絶対自分のこと責めてるって。』

「本当に原先生の言うとおりですね。ゆきさん、一番の被害者はゆきさんなんだから、そういうこと気にする必要ないですよ。」


そりゃぁ紺野家の性格からして、人を罵ったり責めたてたりはしないだろうというのは容易に想像できる。だからこそ、本当にそう思っているのか疑ってしまう。


『ゆきちゃん、とりあえず僕はゆきちゃんが元気に生活できていればそれで良いよ。午後から検診受けて帰ってよね。これは決定事項。ゆきちゃんの身の回りに起こったことは、色んな人に色んな余波をもたらしたけど、全ての責任をゆきちゃん一人で負う必要は無いよ。自分の体のことを一番に考えなさい。どうせ無理してるんだろうから。』


昔から原先生は人を励ますのが上手い。


原先生のおかげでちゃんと大学にも進学できたといっても過言ではない。そんな原先生が検診受けろというからには、受けざるをえない。


結局優太くんと私の間には微妙な空気が流れたまま、午後の検診に向かうことになった。結果はまた後日、ということで帰宅した。


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