Sting
「課長、」
『あぁ、終わった?相変わらず仕事速いなぁ。ちょっと会議室に良い?』
そう言って席を立つ課長のあとを追って、使われていない会議室についた。なんだかいつもどっしり構えている課長とは違って、そわそわしているように見える。
『最近、身の回りでへんなこと起きてないか?』
「え?」
そんな質問が来るとは思わなくて、驚いた。
「特には…。」
『そうか…。』
そう言ったきり課長は口を閉ざしてしまった。そんなに重大なことなのだろうか。
「あの…、何かあったんでしょうか?」
『いや、あったというか…。どうも倖村さんのことをかぎまわってる奴が居るらしいんだ。』
「私を、ですか?」
自分の知らないところで、自分のことをかぎまわられるようなことをした覚えは無い。空調が調節された部屋なのに、寒気が一気に襲ってきた。
『これ。』
そういって課長が見せてきたのは、受付宛にかかってきた私が在籍するか否かの確認の電話のメモと会社に送られてきた過去の週刊誌。
『先週倖村さんが関西に行ってるときに何度か電話がかかってきたらしい。毎日かかってくるから、怪しいと思っていたら、今日これが届いた。』