Sting


メモに書かれてある電話番号は全て違って、それら全てに覚えは無い。


受付の人は顔も綺麗な上に字も綺麗なんだなぁと頭の片隅でそんなことを考えていた。


机の上の週刊誌にどんな内容が書かれているかは見なくても分かる。8年も前の週刊誌、よく取っていたなと感心している自分が馬鹿らしい。


「すみません。お騒がせして。」


頭を下げると少し震えている自分の手に目が行った。





中学、高校と家では全く楽しい時間は無かったけれど、学校生活はそれなりに充実していた。


いつも行動を共にしていた友達とは仲良くしていたし、クラスも楽しいクラスだった。


高2の頃からは、それまでお互いに好きなのは分かっていたけど、曖昧な距離を保っていた爽太とも付き合い始めて、真向かいの爽太の家にもたまにお邪魔させてもらったりしていた。


けれど、高2の秋ごろになって、事態が一変した。



高校を卒業したあとの進路を考えたときに、どうしても家から出たかったことと、母親が留学していたという海外の大学に自分も行ってみたかったことを理由に、海外の大学を受験したいと思ってその旨を父親に伝えた。


しかし父親からしてみればまだ若い自分の娘を海外に一人暮らしさせることはどうも気が進まなかったようで、日本の大学を薦めてきた。どうしても家を出たかった私はその条件を一旦飲みはしたものの、家に居たくない理由を父親にしつこく聞かれるようになった。


麻美さんからされていることを言える訳も無く、適当な理由をつけて交わしていた。


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