Sting


その間に父親の葬儀は終わっていて、気付けば卒業して、海外の大学に逃げていた。


流石に海外まで追ってくるメディアは居なかったけれど、紺野家の皆さんには申し訳なくて、何度か菓子折りに手紙を添えて送った。爽太にも謝罪のメールをして、それっきり。


永澤課長が見せてくれた週刊誌は、ちょうど事件から1ヵ月後のもので、きっと全てがそこに書かれてあるのだと思う。人事部長はこのことを知っているけれど、課長には身の上話をした覚えは無い。


『部長から聞いたよ…。』


そりゃ、部下に問題が起きているんだから、永澤課長に話が行くのは筋だ。けれど、急にまた自分の居場所がなくなるような気がして、ぞっとした。


事件のあと、私に向けられる目は同情だとか興味だとかそういう目。学校に顔を出しても近所を歩いていても、指を指されてひそひそ言われていたのは、妄想でもなんでもないはず。


自分でも顔から血の気が引いていくのが分かったけど、どうしようもない。


『心当たりあるか?』


そう聞かれても事件の当事者の生き残りは私だけ。


父親と母親の親戚は事件の時点で既に亡くなっていた。麻美さんのご家族とは事件後も何度か顔を合わせたけれど、お互い気まずくて連絡先は知らない。


更に、同級生の中でも私が帰国したことを知っている人は居ないはず。


じゃぁ誰が何のためにこのことをまた嗅ぎまわっているのか…。


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