Sting
人事部長ともなれば相当な貫禄がある。
『お、倖村さん!久しぶり!元気だった?』
ニコニコと笑うこの人事部長、実はニューヨークでの元上司。
「お久しぶりです。部長こそ元気そうですね。」
新入社員として入社してからずっと採用担当の仕事をしているけど、そのときの一番上の上司がこの部長で、仕事の仕方や社会人としてのあり方とか、そういうのを全て教えてくれた。
『部長、倖村さんをご存知なんですか?』
『ニューヨークに居たときの部下だよ。永澤くんも良い戦力貰ったねぇ。あ、それで早速倖村さんにお願いがあるんだけど…』
とても言い辛そうに言うから、面倒な仕事でも任されるのかなとふと思った。
『実は研修課の社員が急遽仕事を辞めることになって、出来れば研修課と兼任して欲しいんだ。新入社員のその後の研修まで見てもらうことになるんだけど、良いかな。ロンドンでもそうしてたみたいだし、大丈夫だと思うんだけど…』
仕事は増えるかもしれないけれど、ただ単純に入社させるだけじゃなくて、その後まで面倒を見れるのは良いことだと思うから断る理由が見つからない。一つ返事で頷くと、にこやかに笑って頼むよ、といわれた。
仕事始めの朝礼も兼ねて大きな会議室で人事部の皆さんに紹介していただく。入社以来海外で働いていたから、見知った顔は居ないし、同期の人も分からないから少しだけ不安。