Sting
入社式、面接、異動と人事部に関係のある大きなイベントが立て続けにあって、会社の中では他のことを考える余裕がないくらい仕事に没頭していた。
朝一で出社してぎりぎりまで仕事をして、夜は帰ってすぐ寝る、そんなサイクルを多分人事部みんなが送っていたと思う。
あの日から何度か受付から無言電話を引き継いだり、社用携帯に無言電話がかかってくるようになった。だけど、直接見に降りかかる被害は無いから、特に対策は取れずにただただ毎日を過ごしていた。
採用活動がひと段落した4月の半ばに久しぶりに莉緒と水瀬と飲みに行くことになった。
『ゆきちゃん!』
「莉緒、元気にしてた?」
『何か痩せた?』
「そうかなぁ。」
適当にごまかしつつ、飲み会を始める。
いつも私と水瀬はビール、莉緒はファジーネーブルからスタート。
最初はとても仲が良い2人の間に入って飲むのは凄く気が引けるけど、何度か一緒に飲みに行くうちに本人達はそんなことは気にしていないんだな、というのが分かった。
『そういえば、ゆきちゃん良い出会いはあった?』
「全く。莉緒良い人居ない?」
『えー、ゆきちゃんにつりあうような人そうそう居ないよね。かおるくん誰か思いつく?』
『難しいね。永澤課長くらいしか思いつかないな。』
「課長?」
『課長絶対ゆきちゃんのこと好きだと思うけどな、俺は。』
目が点、とはまさにこのこと。まさかここで課長の名前が出てくるなんてびっくり。
そしててっきり課長は既婚者だと思ってたから更にびっくり。