Sting
『永澤さんかっこいいよねー、ブランドマーケティングから人事に引っこ抜かれるとか将来安泰だよね。』
一人でうんうん、と頷く莉緒。
「課長は素敵な彼女居そうじゃない?」
『去年?一昨年?くらいまでは居るって言ってたけど、最近は聞かないなぁ。仕事中もよくゆきちゃんのこと見てるし、良いと思うけどなぁ、俺は。』
勝手にこんな話のネタにされてなんだか課長に対して申し訳なくなった。
「そんなの感じたこと無いよ。」
『いやぁ、課の中では皆思ってるよ。この前もゆきちゃんと永澤さんが会議室で2人で話してたとき、如何わしいって話になったし。』
あんなに暗い話をしてた私達をよそに、課内でそんな話をされていたなんてなんだかなぁ。
「普通に仕事の話だって。そんな風に思われてたなんてびっくり。多分永澤さんもびっくりだよ。」
ジョッキに残っていたビールをあおると、すかさず莉緒が店員さんを呼ぶボタンを押して、水瀬が追加でドリンクを頼んでくれる。
こういう息のあったところが流石だなぁと思うし、羨ましくも思う。何年も一緒に居るってこういうことか。そんなどうでも良い話をしていると、だんだん莉緒は酔ってきたみたいで、水瀬とのことをにこにこしながら惚気くれた。
「莉緒放っておけないね。」
『すぐ酔っ払うし、すぐ隙見せるからこっちはひやひやさせられる。』
「可愛いなぁ、水瀬も大変だ。」