Sting


莉緒がお手洗いに行っている間も、水瀬は少し心配そう。


確かにあんなに可愛い莉緒のことだから、気が気じゃないだろうな、と心中を察する。


『おい、水瀬。お前の彼女ふらっふらだけど、』


と、突然私達のテーブルに永澤さんが登場。どうやらたまたまお手洗いの前で莉緒と永澤さんが遭遇したらしい。


『すみません、わざわざ。』


ぺこりとお辞儀をして莉緒を迎えに行く水瀬。大変だ。戻ってきた莉緒は凄く上機嫌だったけど、水瀬と強制帰宅。


残された私は、よく分からない流れのまま永澤さんのテーブルにご一緒させていただくことになった。


そのテーブルにはブランドマーケティングの人や人事の人、更には洸太くん含める新入社員も居て、なんだか不思議な感じがした。


『うわー、永瀬さんナイス。こんなところで倖村さんと飲めるとは!』


そんなお世辞を堂々と言ってのけるのは多分ブランドマーケの後輩。右隣に水瀬さん左隣に洸太くんという何とも言えない位置に座らされ、終始気を使う羽目になった。


『本調子じゃないならそんなに無理するなよ。』


と永瀬さんの有り難い忠告を頂いたので、焼酎を作りながら笑顔を浮かべて話を聞いていた。


この会社に入社する時点でそれなりの学力は身に付けていて、更に永瀬さんと仲の良い人たちだから、そこまで下世話な話はないけれど、愛想よく対応するのも大変。


飲まされないことだけがせめてもの救い。だいぶ出来上がった人も出て来たころ、携帯がなった。


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