Sting


「…すみません。」


ぺこりと頭を下げると、そういうつもりじゃないよ、とまた困ったように笑った。


『無言電話、かかってきてるか?』

「それなりには。」

『一人暮らしだよな?』

「はい。」

『変なことおきたらすぐ言えよ?』

「永澤さん、優しすぎますよ。仕事に差し支えるようであればちゃんと報告します。だから、心配しないで下さい。」


永澤さんの下で仕事をするのは本当に楽しいし、とても良い職場だと思う。それぞれ仕事は多いけど、永澤さんの仕事が一番多いはず。


いくら部下の面倒を見なきゃいけないからって、こんなしょうもない無言電話なんて気にすること無いのに、と思う。


同じ部署で働いていると、他の部署の人から上司が永澤さんとか羨ましいな、と良く言われる。仕事に関しては厳しいけれど、それは仕事が出来る人の証。


『倖村さんが私情で仕事に支障をきたすとか考えられないな。多分どんなに辛くてもなんでもないように装って仕事してる姿が想像できる。』

「そんなことはないですよ。私だって仕事にならないときはあります。」


笑って反論すると、そういうところが倖村さんだよな、とつぶやかれた。


良く分からないけど、永澤さんが人のことを良く見ているということは分かった。


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