Sting


頭脳明晰・容姿端麗とは彼のためにあるんじゃないか、と言えるくらい頭も良くてスポーツも出来て、お父さんとお母さん譲りの綺麗な顔立ちをしていて、学校中の憧れの的だった。


そんな何でも持ち合わせている爽太は、その能力をひけらかさず、いつも皆に気配りが出来るいわゆる良い子だった。


だけど、本当は周囲の期待に沿わなきゃいけないという思いが人一倍あって、跡取りとしての努力を怠らない少し子供離れしたところもあった。高校に入学したての頃、他の人の気持ちばかり気にしてたら、爽太じゃなくなるよ、と何の気なしに言ったことがある。


一瞬驚いたような顔をして、そんな事言うのは紫だけだなと穏やかな顔をしていたのは今でも鮮明に思い出せる。


付き合っていたときも、その前も、とても大事にしてくれた。


麻美さんに殴られて蹴られて体が言うことを聞かなくてどうしても学校を休んだ日は、必ず家に寄って麻美さんにプリントを渡してくれた。


学校を休みがちになって痩せていく私を見て、優しい爽太のことだから何で理由を言ってくれないのかと気になっていたと思う。もしかしたら痩せすぎた私を見て、幻滅していたかもしれない。


けれど、そんなことは顔に出さずにずっと気にしてくれていた。


あの事件の前日の夜は金曜日で、久しぶりに学校にも行けて、爽太とか友達の部活が終わるまで待って、皆でくだらない話をしながら帰ったのが凄く懐かしい。


最後まで体調を気にかけてくれた爽太は、また月曜日学校行けたら一緒に行こうと言って見届けてくれたのに、結局月曜日に一緒に学校に行くという約束は叶わなかった。


元気かな、無理してないかな、なんて感傷に浸っていると、プライベート用の携帯が鳴った。


ディスプレイを見ると、登録されていない携帯の番号が羅列されていた。


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