Sting
本当は帰って寝たいけど、ここで断っても結局いつかは行かなきゃいけない。
重い腰を上げて、急いで準備をして帰る。
というか、こんな都会のど真ん中で車で迎えに来るとか、流石はお金持ちだ。
エレベーターを降りて、守衛さんに挨拶をして会社を出ると、会社のまん前にアウディがでーんと停まっていた。
挨拶もそこそこにわざわざ降りてドアを開けてくれるあたり、紳士なんだかなんなんだか…。
「いつもお断りしてしまって、すみません。」
『良いよ、紫ちゃん忙しそうだし。』
久しぶりに見た駿さんの顔は、昔の面影もあるような気がしたけど、なんだか最近どこかで見たことがあるような気がした。でも8年前以来多分会っていないはずだし…。
『紫ちゃんテレビとか見る暇も無い?』
「そうですね、家に居る時間が短くて…。」
『結構露出してるほうなんだけどなぁ、最近。』
テレビ、露出…?
『最近、Azureのモデルもしたし「あ、モデルのシュンって駿さんだったんですか?」
『そ、俺だよ。』
だからどこかで見たことがあると思ったんだ。というかこんなに普通に街中に出歩いて良いのだろうか。
芸能情報に疎い私でも最近では良く耳にする『モデル・シュン』の名前。