Sting
『あ、水瀬さん!お疲れ様です。莉緒さん呼びましょうか?』
フロアを歩いていると、すれ違った綺麗な子に声を掛けられる水瀬さん。綺麗な立ち姿と、可愛らしい笑顔から多分秘書課の子なんだろうなぁという気がする。
「うん、お願いしていい?」
その水瀬さんの言葉に対して、ぺこりと頭を下げて秘書課の部屋に入っていくその女の子。流石大きい総合商社だけあって、レベルも高いわ、とそんなことを考えていた。
『水瀬くん、呼んだ?』
ひょこっと顔を見せたのは身長の低い可愛らしい子。
『郁巳さん、こちらロンドンから異動してきた倖村さん。倖村さん、こちらが同期で秘書課の郁巳さん。』
「倖村です。わざわざ仕事中にすみません。」
『うわぁー、噂の倖村さんだ!想像以上に美人!綺麗だね!凄い!』
目をキラキラさせて言う郁巳さんはきっと社内の人気者。そしてそれをにこにこして見つめる水瀬くんは凄くやさしい顔をしていた。
「もしかして、お二人は付き合ってますか?」
興味本位で聞くと驚いたような顔をする2人。絶対そうだな、これは。
『かおる、言ったの?』
『言ってない。言ってない。』
『倖村さん怖い!見破られたの初めてかも!』
「なんとなく、そんな雰囲気ですよ。水瀬くんがあんまりに優しい顔して郁巳さん見つめてるから、もう長いんだろうなぁって。」
『かおるくんのせいだ!』
顔を真っ赤にして言う郁巳さんは本当に可愛い。庇護欲に駆られる。