Sting


『新人研修も受け持つんでしょ?でもすぐ夏採用始まるし、休めないね。』

「体力勝負だよね。」


ここ最近は地方の説明会を渡り歩いていることもあって、なかなかデスクワークが進まずにいたから、デスクには書類が山積み。だけど次の週には新入社員の懇親会もあるし、そんなことも言ってられない。


「莉緒は最近どう?」

『相変わらずかなぁ。』


なんて話をしていると、研修課の後輩が呼びに来た。急遽残っている人だけで会議をやるらしい。研修課にはまだ片足くらいしか突っ込んでいない。


今年度の4月に内々定を出して、それから何度も会議を重ねて今後どうやって育てていくかを決めてきたところに、ぽんと入ってもあまり役には立たない。


実際に新入社員に会うのは来週が初めてだし、本格的に取り組むのは来年度の研修と4月に内々定を出す学年だろう。


「莉緒ごめんね、途中で。今日は水瀬、ずっと仕事してたから早めにに帰るつもりだと思うよ。」

『ううん、仕事頑張ってね。じゃぁ先に帰ってかおるを待っとこうかなぁ』


ふふっと笑いながらきっとかおるのことを考え始めた莉緒をおいて休憩室から会議室へ向かう。


遅くなったことを謝罪して会議室に入ると、既にメンバーは揃っていた。来週の懇親会の内容変更があるとのことで、手元の資料をぱらぱらめくっていると参加者の名簿が資料として付けられていた。


さっと目を通すと見知った名前が1人。


【紺野洸太(こんの こうた)】


高校生の時、付き合っていた人の弟。

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