Sting


だいぶ年が離れているから、本人が覚えているかは分からないけど、多分そうだと思う。嫌いあって別れた訳ではない洸太くんの兄のことを少し思い出して、胸が痛くなる。


当日の流れや役割を確認して、会議が終了するまであまり集中できなかった。


今日はもう仕事にならないなと判断して、いつもより早めに会社を後にすると、プライベート用のスマホに電源を入れると、着信が2件。かれこれ5年は連絡していなかった人からの着信だった。


『はい、もしもし。ゆきちゃん?』

「原先生、お久しぶりです。」

『帰ってきてるんだって?向こうから連絡あってびっくりした。』

「すみません。連絡せずに。」

『僕は良いけどね。今度検診がてら顔見せにおいでよ。』

「はい、1度お伺いしますね。」

『じゃぁ、また連絡してね。』


昔お世話になった大きな大学病院の原先生は、優しくてなんだか小児科の先生のような雰囲気がある。アメリカへ進学したときも、向こうの先生を紹介してくれた。


今日はなんだか懐かしい出会いが大いなぁ、とそんなことを考えながら家に帰って食事を作る。外食も嫌いじゃないけど、やっぱり自分の家でバランスの取れたものを食べることのほうが好き。


いつもよりずいぶん早くお風呂に入って、ベッドにもぐる。


最近は日付を跨いで帰ることがほとんどだったから、あっという間に眠りに落ちた。

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