一難去って、またイチナン?
一難去って、またイチナン?
「白石先輩、どうしたんですか?」
遠慮がちな声をかけてくれたのは、隣の席の黒田くん。
僅かに尖らせた唇、眼鏡の奥には潤んだ黒い瞳が揺れている。心配そうに眉を寄せた黒田くんが、そっと首を傾げた。
意図せず漏れてしまった私の溜め息に、ご丁寧に反応してくれたらしい。
「ごめん、何でもないの、気にしないで」
「はい……本当に大丈夫ですか? 何かあったら言ってくださいね」
黒田くんの気持ちは有難い。
だけど何かあったとしても、彼の頼りなさげな声に縋ろうとは思えない。
「ありがとう、ごめんね、本当に気にしないで」
「はい、わかりました」
黒田くんは納得できないような顔をしながらも頷いて、パソコンへと向き直った。
やれやれ、
ちよっとめんどくさいけど可愛い後輩。
< 1 / 10 >