一難去って、またイチナン?
会議机を挟んで向かい側、青山主任に書類を手渡す。ひと通り眺めた青山主任は書類を指差して、
「知華、ここはもう少し織り込んでおいた方がいいんじゃないか?」
と言って、私を見つめる。
薄っすらと笑みを浮かべた顔をして。
だけど私は、微笑み返したりしない。
「二年前の工事では実績計上がなかったので、これで十分と思います」
「知華、派遣は昼夜勤だろ? 工数が少なくないか?」
「工数は工事部に確認しました。兼務が入るので、実際の工数は下げられるそうです」
「そうか……、知華、ここは?」
青山主任が書類を指差して、顔を近づける。確かに数字ばかりが並んでいるから見えにくい。
「これは……」
会議机に身を乗り出した私の手に、青山主任の手が重なる。
すぐに引っ込めようとしたけど時すでに遅く、強く握られてしまって離れない。