Serendipity(セレンディピティ)
「それでお前は?…まさか千尋?リン?」
「残念でした。中橋真由っていう普通の名前でーす」
「なんだ。つまらない。」
「あのね、ハク。わたし、キャバ嬢なの。」
わたしを拾ってくれて、助けてくれた。
こんな、わたしを。
だから、初めて、
同じ仕事関係の人以外に、自分の職業を明かした。
この人には、全部話してもいいようなそんな気がした。
今日初めて会った人なのに。
この人の優しい瞳が、そうさせてくれたのかもしれない。
「それでわたし、同僚からもいじめられてて。その延長で知らない男たちに襲われた。暴力振るわれた。」
「……そうか。警察には行くか?」
わたしは静かに首を横に振った。
「今は、いい。今は、考えたくない。」
「わかった。…家は?お前何歳だ?親御さんとか心配してないのか?」
「18歳だよ。もうすぐで19になる。親はいない。捨てられたの。」
そう言うと、ハクは目を悲しそうに細めた。