真夜中のパレード
感情の発露
ここ数日、天音さんから
距離を置かれている気がする。
上条は仕事先から帰り、
天音と初めて待ち合わせをした時計塔の前に立って
彼女のことを思い出した。
針は夕方の四時をさしている。
――何かあったのだろうか。
やはりこの間公園に行った時、
怒ったふりをしたのがよくなかったのか。
あの日別れた時は特に何かが変わった様子もなかったけれど、
最近明らかに様子が違うのを感じ取っていた。
今までは、メールを送ると一時間もたたないうちに
返事が来ていた。
自分もまめなほうではないが、
天音とは頻繁にやりとりをしていた。
彼女が好きなのももちろんだけれど、
きっと自分はどこかで恐れているのだ。
それに何より、彼女の方から一切連絡が来なくなった。
『今日はあたたかくていい天気でしたね。
そういえば、この間上条さんが
面白いって言ってた映画、
仕事帰りにかりてきました!
今日の夜見ようと思います♪』
前に届いたメールを見返すと、
ずいぶん昔のことのような気がした。
彼女の心が離れてしまうのが怖くて、
今日の夜半ば無理矢理会う約束を取り付けた。
最初は迷っていたようだけれど
承諾してくれた。
彼女はいったい何を考えているのだろう。
短い文章の羅列からでは、
読み取ることが出来なかった。