真夜中のパレード
「藤咲天音という女性に会いました」
「あ……」
“彼女”と、会ってしまったのか。
透子の心がぐらぐらと揺れる。
「けれどそれは、あなたじゃなかった」
「私……」
悲しげな声音と歪んだ表情に、
どうしようもない後悔が襲ってくる。
最後はこうなると、
最初から全部分かっていたことだったはずだ。
全部嘘で、自分の作りあげた“天音”は
架空の人物だ。
だけどどうしても、もっと彼の側に
いたくて。
会社で見せるのとは違う、彼の表情を知りたくて。
知れば知るほど、近くで彼を見ていたくて。
そうして、嘘に嘘を重ねた。
――天音の存在がすべて嘘だった知った彼は、
一体どんな気持ちになった?
透子は頭を深く下げ、彼に謝罪した。
「ごめんなさい!」