真夜中のパレード


「それで、いずれは家庭を築いて、
二人で一緒に暮らして……」


痛々しくて、もう耳を塞いでしまいたいくらいに
悲しい声だった。



「まだ会って数回で、
お互いのことをほとんど知らないのに。

勝手に一人でそこまで考えて、舞い上がって。

私は本当にどうしようもないですね」



透子は上条の顔を見返すことが出来なかった。



――傷つけた。



きっと自分が思っている以上に、
もっと深く、もっと冷たく。



彼の心を、ひどく傷つけてしまった。



いつも、自分のことを気遣ってくれたのに。


いつも、いつも。



優しさを。

笑顔を。



いろんなものを、たくさん与えてくれたのに。



――自分のしたことは、
それをすべて裏切るような行為だけ。



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