真夜中のパレード




上条は静かに問いかけた。
    

「では、本当の名前は?」



透子は唇を噛み締めて悩んだ後、首を横に振った。




「…………ごめんなさい」




彼の表情が、より落胆した物になる。



「言えません」


これ以上悲しむ上条を見たくなくて、必死に訴えた。



「でもそれは、直樹さんが信頼出来ないからじゃないんです!」


「それなら、どうして?」


「……もうあなたに嘘をつきたくないんです」


透子の顔がくしゃっと歪む。


「散々嘘をついておいて、
都合のいいことばかり言って、
今さら信じられませんよね」



これで終わりだ。


信じてくれなくていい。

許してくれなくていい。

もう、何も求めない。



そう思って上条を見ると。



意外にも、彼は笑みを浮かべていた。



「信じますよ」



胸がつまる。

優しい表情に、目の前がぼやけた。


「だけど……」


戸惑っていると腕を引き寄せられ、強く抱きしめられる。



「天音さんの言う言葉なら、なんだって信じます」


……今さら。


「あなたの言う言葉なら、何だって信じます。
それが真実かどうかなんて、もうどうでもいいんです」

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