真夜中のパレード
「それでも私は嫌いなんです。
この顔でいていいことなんて、まったくなかった」
彼女の言葉からは、有無を言わせない響きがあった。
今まで様々な要素が彼女を取り巻いていたのが分かり、
迂闊なことは言えないと思う。
透子は気持ちを切り替えるように、
明るく笑った。
「藤咲さんは、私の理想の人なんです」
それは衝撃と言っていいくらいの一言だった。
上条は一瞬口ごもる。
……あの店員が、理想?
確かに愛嬌があり、人当たりのいい店員だった。
しかし外見は、正直どこにでもいる普通の女性だった。
藤咲天音のどこに惹かれたのだろう。
本物の藤咲には悪いが、まるで検討がつかない。
透子は優しく目を細めた。
「前に、私の家族が病気で倒れたことがあったんです」
上条は真剣に耳を傾ける。
「それでしばらく経過を見て。
手術をしたらよくなるかもって言われてしたんですけど、
全然容態は変わらなくて」