真夜中のパレード
次にSantanaに言った時お礼を言うと、
藤咲は眩しい笑顔を見せてくれた。
彼女と最初に話した日は、『擬態』を施していない
そのままの顔だった。
もう化粧をする気力もなかったのだ。
だから素の顔の透子としてはなかなかSantanaに
行けなかったけれど、
会ったのはたった数回でも
彼女は店に行くたびこちらが元気になるような言葉をかけてくれた。
「太陽みたいな人だなって思いました。
だから、上条さんと最初に会った日も、
Santanaの帰りだったのもあって
咄嗟に思いついた彼女の名前を言ってしまいました」
そうして申し訳無さそうに目尻を下げる。
「でも、それって結果的に彼女にも迷惑な話ですよね。
全然架空の名前にしたほうがよかったかな」
「例えば?」
「え、えっと……
江戸川クリスとか?」
上条はおかしそうに笑った。
「さすがにそれだと、
すぐ嘘の名前だってバレバレですけどね」
透子は彼に問いかける。
「いつも笑顔でいる人って、いいなって思いません?」
そう言われると、上条も妙に納得したようだった。
「あぁ……そうですね。
確かに。私には出来ないことだと思います」
それを聞いて、思わず吹き出してしまう。
「あ、天音さんっ!」
「ごめんなさい。
確かに直樹さん、苦手そう」
「ひどいですね」
天音といる時はまだ違うけれど、
会社にいる時の上条は確かにいつも笑顔とはほど遠い。