真夜中のパレード


 ☆


十数分してから、上条だけがフロアに戻ってきた。



透子は彼を見つけるとはっとして駆け寄り、
上条に声をかける。


「上条さん! あの、私、何か……」


上条は疲れたように眉を寄せ、
頷いて透子を呼び出した。


「……そうだな、七瀬にも話を聞かないと。
ちょっと来てくれ」


「はい」


透子はどきどきしながら彼の後ろを歩いた。




上条は透子を応接室の中に入るよう促し、
外にあったプレートを「使用中」に変更した。


普段は客の応対や新入社員の面接に使う部屋だ。


中に入ってこうして誰かと話をするのは
入社した時以来だった。


上条は椅子に浅く腰掛け、
手に持っていた紙の束を透子に見せた。


「これは、今日七瀬が作成していた書類だな」

「はい」


その通りだったので、
透子は素直に頷いた。


< 148 / 307 >

この作品をシェア

pagetop