真夜中のパレード
――それは、七瀬透子と一緒に蕎麦を食べた時だ。
何か、見てはいけない物を見てしまったような。
そんな居心地の悪い気分になり、
もう一度思考する。
何が、似ているんだ?
声か?
雰囲気か?
「本当の名前を言えない」
そう言った天音の顔を思い出すと、
ずきりと胸が痛んだ。
それから、
自分は疲れているのかもしれないと思った。
いくら雰囲気が似ていたとはいえ、
発想が飛躍しすぎだ。
まったく似ても似つかないのに、
どうして“そう”考えてしまったのか。
けれど、さっきの七瀬透子は。
もしかしたら、彼女は――
上条は目を閉じ、思考を無理矢理打ち切る。
声が似ている人間なんていくらでもいる。
雰囲気なんて、それこそ気分で変わるものだ。
しかし――
考えてはそれを打ち消し、また考えては打ち消すことの
繰り返しだった。
何度逡巡しても、
結局納得のいく答えは見つからなかった。