真夜中のパレード


――それは、七瀬透子と一緒に蕎麦を食べた時だ。


何か、見てはいけない物を見てしまったような。


そんな居心地の悪い気分になり、
もう一度思考する。


何が、似ているんだ?


声か?


雰囲気か?




「本当の名前を言えない」



そう言った天音の顔を思い出すと、
ずきりと胸が痛んだ。



それから、
自分は疲れているのかもしれないと思った。



いくら雰囲気が似ていたとはいえ、
発想が飛躍しすぎだ。


まったく似ても似つかないのに、
どうして“そう”考えてしまったのか。


けれど、さっきの七瀬透子は。


もしかしたら、彼女は――


上条は目を閉じ、思考を無理矢理打ち切る。


声が似ている人間なんていくらでもいる。

雰囲気なんて、それこそ気分で変わるものだ。



しかし――



考えてはそれを打ち消し、また考えては打ち消すことの
繰り返しだった。



何度逡巡しても、
結局納得のいく答えは見つからなかった。


< 157 / 307 >

この作品をシェア

pagetop