真夜中のパレード


 ☆




不可解だ。



いくら考えても、不可解極まりない。




向かいの席では、
派手な服装の男が
メニューを眺めている。


「仕事今終わって、
すげー腹減ってんだ。
何かがっつり食って行こうかな」


どうして自分は、初対面の金髪ピアスの男と
酒を飲むことになっているのだろうか。


上条は目をすがめ、
正面に座っている男をじっと睨んだ。


男はにこにこ笑っている。


「かみじょーさん、何頼む?」

「ビールでいい」

「はいよ」


返事をすると、冬馬はすぐに店員に声をかけた。


「注文いいですかー?」

「はーいっ」


返事をしてテーブルについたのは、
本物の藤咲天音だった。


上条を見た途端、
前と同じようににっこりと愛想のいい笑顔を浮かべる。


「あ、この間の」


上条は彼女が自分を覚えていることに驚いた。


が、よく考えれば初対面でいきなり名前を呼ぶなど、
変な客だったことには違いない。


印象に残っていてもおかしくないだろうと
考えなおした。


とりあえず軽く会釈しておいた。

「先日はどうも」


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