真夜中のパレード

「……当然だが、君は彼女の
本当の名前を知っているんだな」


「そりゃ、もちろん」


余裕のある笑みのあと、
隙のない口調で言い放つ。


「あんたには絶対教えないけどな」


天音には元々言いたくないと言われていたのだから、
最初から聞く気も毛頭ない。


が、そうやって改めて否定されると、
冬馬の言葉に思わずかちんと来た。


冬馬はにやにや笑いながら続ける。



「名前も知ってるし、実家の住所も知ってるし、
小学校の時飼育委員やってたのだって知ってるぜ」


ふっ、と鼻で笑って馬鹿にしたように付け足す。


「羨ましい?」





……羨ましい。



口には絶対出さないが。


上条は素直にそう思った。


冬馬はビールを飲みほし、
感慨深い口調で呟いた。


「しっかし、あいつに彼氏が
出来るとはなー」

「え?」


「以外と一生出来ないかもしんねーと思ったけど」

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