真夜中のパレード
上条はその言葉を聞き、
少し安心した。
「君は、天音さんの元恋人ではないのか」
冬馬はさらりと嘘を言う。
「うん、付き合ってるよ。
今現在も」
ぴしっ、と自分の顔に割れ目が入ったような気分になる。
上条が絶句していると、
冬馬はにしし、と笑った。
「う・そー」
「お前……」
思わずにらみつけてしまう。
すると冬馬は少し淋しげに笑い、
空のグラスをくるりと揺らした。
「彼氏じゃないよ、俺は。
俺はあいつにとって完全に、
“家族”のカテゴリに分類されてるからさ」
そう呟いた彼の口調から、
この男が天音をどう思っているのかが、
よく伝わってきた気がした。
上条は溜め息を吐き、
星のない空を見上げた。
「……こんなことを聞くべきではないかもしれないが」
もしかしたら、少し酔ったのかもしれない。
「その……」
「あ? 何だ?」
一瞬躊躇したが、
こんな機会はもう滅多にないだろう。
彼に聞いておくべきだ、と思った。
それは上条がここ数日、真剣に考えていた疑問だった。
「天音さんは」
「……何だよ」
冬馬の顔を真っ直ぐに見つめ、
はっきりと問いかける。
「天音さんは、整形してるのか?」