真夜中のパレード

それまでは木本が透子に指示することが多かったけれど、
木本と揉めてからは上条が
透子の仕事を見る機会が増えた。


母親のことを、彼にもきちんと伝えておかないと
いけないと思う。


透子は部長に話したのと同じように
母の病状を告げる。


『あぁ分かった』、
といつもと同じように
無愛想に返事をされるだけだと思ったけれど。


今日の上条は、いつもとは少し反応が違った。



「……お母さんの具合、悪いのか？」


「……はい。お医者様に、今週が山だと言われて。
またご迷惑をおかけするかもしれません」


上条は気の毒そうに透子を見つめた。


「七瀬はまだ有給もたくさん余ってるだろう。

今はそこまで繁忙期でもないし、
心配ならしばらく休んで側にいてあげたほうがいい」


それから、透子を元気づけるように
薄く微笑んだ。


「俺も、出来る限り協力するから」


「ありがとう……ございます」


意外な反応に、
鼓動が早まるのを止められなかった。