真夜中のパレード
遠ざかっていく上条の背中を見て、
胸が苦しくなっていくのを感じた。
……『直樹さん』に、抱きしめてほしい。
上条のことを愛しいと思う気持ちが、
透子の中にどんどん溢れていった。
そして早く天音として彼に会いたい、
と思った。
こんな、すぐ近くにいるのに、
指一本も触れられない関係ではなくて。
自分を強く抱きしめて、
優しく笑いかけてほしいと思った。
次に天音として彼に会えるのはいつになるだろう。
どうして隣にいるのに、
こんな風に彼を遠いと思わないといけないんだろう。
そう考えると、とてつもなく
寂しい気持ちになる気がした。