真夜中のパレード
愛しい声
「上条さん」
ふわふわした空間で、
急に天音の声が響いた。
「……上条さん、起きてください」
――天音さん。
あぁ、これは夢だ。
そう認識しつつ、上条は眠りの中で
必死に愛しい人の姿を探した。
もうずいぶん長く彼女に会っていない。
この間感じたような距離はなく、
電話はたまにして声を聞いているけれど、
なかなか約束に結びつかない。
早く彼女に触れたいと思った。
「上条さん。
……上条さん、風邪引いちゃいますよ」
――上条さん?
いや、その呼び方で自分を呼ぶのは……。
はっと顔を上げ、
すぐに現実に引き戻される。
「あ」
蛍光灯の光が眩しい。
「上条さん、大丈夫ですか?」
「……いや、寝ぼけていただけだ」
自分の机だった。
時間を確認すると、
夜の八時半。
どうやら疲れていて、
仕事中に本気で眠ってしまったようだ。