真夜中のパレード

「鈴架総合病院から連絡だそうだが、
繋いでもらうか?」


「あ……」


途端に透子の顔から表情が消える。


そして必死に電話の方に駆け寄る。



「あの、母の入院している病院です!
はい、お願いします!」



病院からわざわざ会社に電話?


それだけで、悪い予感が頭の中をひしめいた。


透子は震える手で受話器を受け取った。


「もしもし」




「……はい、はいっ!

……分かりました、すぐに行きます」


透子は会話を終えた後、
半ば放心しながら受話器を置いた。


「おい、どうした!?」


「あの……」


声が震えて、うまく喋れない。


「母が危篤で、すぐに来てほしいって。
私、あの、病院に行かないと……」


上条は透子の手を掴み、
早足で歩く。



「お前、車は!?」


「な、ないです。
今日も電車で……」


透子はおろおろしながら、
上条に引っ張られて
もつれそうになる足をどうにか必死に動かした。


上条はエレベーターのボタンを強く押した。


なかなかたどり着かないことに苛立ちが募る。



……早く、早く。


急いて靴を鳴らしていると、ようやくランプが点った。



一階に降り、
駐車場についてから透子ははっとして顔を上げる。


「そうだ、
あの、タクシーを呼ばないと……」

< 180 / 307 >

この作品をシェア

pagetop