真夜中のパレード
「俺だって、いくらでも手伝ってやる」
透子は隣に座っている彼の顔を見上げた。
怒っているかと思った彼の表情は。
思っていたよりずっと穏やかで、
いたわるような笑みを浮かべていた。
その顔を見た瞬間、
胸の中に押さえられない感情が溢れた。
「今、お母さんのために娘として
悲しんであげられるのは、
お前だけだろう」
優しい、穏やかな声が車の中に静かに響く。
「今は他のことは考えないで、
ちゃんと泣きたい時に泣いておけ」
そして上条は、ゆっくりと目を閉じた。
「我慢すると、きっと後悔する」
「あ……」
それを聞いた瞬間。
おさえていた物が、
一気に堰を切ったようにすべてあふれだす。
「……っ!
お母さん、お母さんっ!」
透子は大声で叫びながら、
上条の腕をぎゅっと握った。
「あ、ああああああああああっ!」
子供のように泣きながら、
最期に見た母の顔を思い浮かべる。