真夜中のパレード
「上条さん?」
透子に声をかけられ、上条は薄い笑顔で首を振った。
「……いや、何でもない」
それから上条は、
自分の父親のことをふと思い出した。
「俺の父親も、去年死んだ」
透子はその話を聞いたことがあるのを思い出す。
それを聞いたのは、天音の時だ。
公園にある池の前で、彼の隣に座って、
父が亡くなったという話を聞いたのだ。
「俺の父親は痴呆が入っていて、
最後はもう、俺のことを覚えてなかった」
ふと透子に目をやり、
ぎょっとして話すのを止める。
「……おい」
泣き止んだと思ったのに、
またぼろぼろ泣いている。
「す、すみません。
何だか感傷的な気持ちで……」
「お前が泣いても仕方ないだろう」
「だって……」
顔をおおいながら、
くぐもった声で続ける。
「お父さん、なのに。
覚えてないなんて。
そんなの、……っ!」