真夜中のパレード
水族館の帰り、大雨が降ってびしょ濡れになった。
猫が見たいと言われ、
彼女を自分の家に連れてきたのはいいものの
眠っているのを隣で見ているのが、
とんでもない苦痛だった。
そしてSantanaで彼女の嘘が分かり、
不安に苛まれた。
けれどもう、
どんな嘘をつかれても、
彼女が自分の側にいてくれるならそれでいいと。
そう思って、
「どこにも行かないでほしい」
と祈るように告げた夜のこと。
彼女と一緒に過ごした時は、
どんな苦しい物だって
自分にとってかけがえのない大切な時間だった。
どの一瞬も、綺麗で美しくて、夢のようで。
――まるですべてが、
絵本の中のお伽話だったみたいだ。
上条は冷静な瞳で信号を見つめる。
今は、魔法が解けた後のようだった。
彼女といる時間は、
いつも自分にとって
日常と切り離された所にあった気がする。
幸せだった。
けれど、どこか現実味に欠けていた。