真夜中のパレード


……考えてみれば、
彼女に会ったのはあの夜以来だった。


彼女を初めて抱いた夜。


不思議なことに、
会っていない間もずっと彼女が近くに

いるような気がしていたけれど、
こうして会うのはあの夜以来なのだ。


上条は思わず苦い物を噛んでしまったような
気持ちにさいなまれる。


また迷いが心に混ざるのを
消し去ることが出来ない。


今このタイミングで言うのは、
残酷で自分勝手すぎると思う。


そんなこと、何度も考えた。


上条は隣で穏やかに笑っている天音を
ちらりと見やる。


……だけど、
タイミングなんて、きっといつになっても変わらない。



家に到着し、
天音の座っている方の扉を開く。


今から自分のしようとしていることは、

どんなに時間がたとうが、

どんなに準備をしようが、

結局残酷で自分勝手なことに変わりはないのだから。

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