真夜中のパレード
☆
狭いリビングに、
透子が腰を下ろした。
上条は彼女に向かい合い、
真剣な表情になる。
透子も、彼のいつもとは違う空気を
肌で感じ取っていた。
何か大切な話があるのだとは、
覚悟したつもりだった。
けれど。
「しばらく距離をおかせてください」
上条から突然告げられたその言葉の意味は、
やっぱりすぐには理解出来なかった。
「えっ、と……」
一瞬、透子は彼が冗談を言っているのかと思った。
冗談だと、思いたかった。
けれど、彼の眼差しは、
会社で見る仕事をしている時のそれよりも、
何倍も真剣だった。
「自分でも、正直分からないんです」
言葉がただ、耳の間を流れていく。
「けれど、多分」
分かったのは、
彼の表情を見て、
彼自身も苦しんでいるということだった。
「他に好きな人が出来ました」