真夜中のパレード
あんなに優しい人を騙して、
何の報いも受けずに
側にいられるわけがなかったのに。
そう思う一方で、
どうして、
という疑問が拭えなかった。
許せないのなら、
嫌いになったというのなら、
どうして私が藤咲天音でないと分かった時に
そう言ってくれなかったのか。
確かに最近、
『天音』から彼に連絡はほとんどしていなかった。
……だけど、数日の間のことだ。
本当に、その間に好きな人が出来たのだろうか。
『お願いだから、どこにも行かないでください』
そう、言ったのに。
『探します。
あなたを見つけるまで、絶対に』
愛おしむように自分に向けられた眼差しを思い出すと、
胸が張り裂けるように苦しくて仕方なかった。
「嘘つきっ!」
涙が絶え間なく流れ落ちる。
他のことを考えようとしても、
浮かぶのは彼の優しい笑顔ばかりだった。
病院でずっと自分のことを待ってくれていた。
みっともないのなんていつものことだから、
我慢せずに泣けばいいと言ってくれた。
態度は違うけれど、
それでもいつも彼は優しかった。