真夜中のパレード
「きっと一生、あの人のことが好き」
透子の瞳から、
透明な物が流れ落ちる。
「一生は言い過ぎかな。
ただの、思いこみなのかな」
それを見て、冬馬は眉をしかめた。
「泣いてんじゃねーよ。
俺が泣かせたみたいだろーが」
「ごめん」
透子は軽く笑って、
涙を拭う。
「でももしまたこれから他に
誰かのことを好きになっても、
彼のこと、きっとずっと忘れられないと思う」
冬馬はその答えに不服なようだった。
「お前そんなんで、辛くねーのかよ。
同じ会社にいるんだろ?」
「うん、なるべく早く諦められるようにとは
思うけど。
でも、すぐにはまだ、他の人をとか。
そういう風には、考えられない」
冬馬は飲み終わったグラスを傾け、
席を立つついでに透子の頭を軽くはたいた。
「……だから、保留にしとけよ。
俺は待つのなんて、もう慣れっこなんだから」
透子は何も言えずに、
彼の背中を見送った。