真夜中のパレード
落ち着かない心持ちでシートベルトを締める。
最近、まともに彼と話していない。
何となく会話もぎこちない気がする。
すぐ隣の席に上条がいると思うと、
なかなか落ち着かなかった。
透子は離陸ランプが消えてから手持ち無沙汰になって、
置いてあった薄い雑誌をぱらぱらとめくった。
音楽でも聞いてるフリをしようかな。
でも、いきなりイヤホン使うと
さすがに感じ悪いかも。
そんなことを考えながら、
ちらりと隣の席の上条に視線をやる。
彼は熱心な様子で書類に目を通していた。
透子はこっそり安堵した。
上条さん、忙しそう。
でも話しかけられないでほっとしたかも。
透子は悩んだ挙句目を閉じ、眠っているふりをした。
このまま向こうに着くまで寝たふりをしておこう。
会話するのも気まずいし。
そう思って顔を横に傾ける。
眩しい光が顔に当たり、薄く目を開くと
窓の向こうの白い雲が浮かんでいた。