真夜中のパレード


本人の今後の飛躍のためにも、
色々な経験をさせたほうがいいと思った。


……というのは、
やっぱり言い訳かもしれない。


本当の理由はきっと
今回の出張がきっかけで、

以前のように七瀬透子と話せるように、
少しでも距離を縮められたらいいと思ったからだった。



あどけない顔で眠っている透子を見て、
小さく息を吐く。


こうやって眠っていれば、
怯えたり困惑されたりして気まずくならずにすむのに。

さっきロビーで待ち合わせをしていた透子を見つけた時も、
直立不動で緊張した面持ちだった。


思えば搭乗手続きをして座席に座るまで、
まともな会話を交わしていなかった。


前途は多難そうだ。


少し心が挫けはじめていた。

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