真夜中のパレード
☆
「おい、七瀬、着いたぞ」
「え……?」
声をかけられて顔を上げると、
もう空港に到着していた。
席の間に行列ができ、
みんな飛行機から降りる準備をしていた。
「あ、すみません!」
透子は驚いて髪の毛を指で整えた。
寝たフリをするつもりだったのに、
完全に熟睡してしまった。
昨日色々考えて、
あんまり深く眠れなかったからかもしれない。
「ほら、降りるぞ」
「はい」
まだはっきりしない頭で、
透子は上条の後ろに着いて歩いた。
透子と上条が取引先に到着し、
挨拶をすませるとすぐに
機器の設置をすることになった。
会議室に新製品の映像投影機をレンタルし、
プレゼンを行っている間
うまく機械が作動しているかチェックする。
と言っても、機械の設置は
あらかじめ呼んでおいた業者の人間がしてくれるので
透子と上条はあまりやることがなかった。
会議室で業者の人達が
忙しそうに大型の機材を設置するのを眺める。
透子は邪魔にならないように壁際に寄って、
機械が組み立てられていく様を懸命に見ていた。