真夜中のパレード


透子もつられて険しい口調になる。


「あなたと話していると、
私は悲しい気持ちになるんです!」


「だから、それがどうしてだって
聞いてるんだ!」


そう言ってから、
はっとして声を落とす。


「……お母さんを亡くしたことを、
思い出すからか」


まるで検討違いなことを言う上条に、
透子も少し腹がたっていた。

母が亡くなったのは辛い。

けれど、さすがにそれを
上条さんのせいになんてするわけがない。


透子はすぐさま首を振って否定した。


「違います!」


「じゃあ、どうしてだ?」


透子の顔が泣きそうに歪む。



どうして?



どうして上条さんは、
分かってくれないんだろう。


どうして好きな人がいるのに、
こうやってただの部下に熱心に接しようとするのか。


彼は真面目な人だとはいえ、
そんなに職場での交友関係を重んじる人だっただろうか。


それとも身寄りがなくて同情しているから、
面倒を見ようという義務感が働いているのか。


お願いだから、期待させるようなことはしないで、
と叫んでしまいたかった。

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