真夜中のパレード


驚いて顔をあげ、その人物を見てさらに驚愕した。


「いい加減にしろ。
あんたの行為は犯罪だ」


長い腕が酔っぱらいの男に伸び、
手首を強くひねりあげる。


「い、いてててて! こら、やめぇや!
お前、ふざけんじゃねぇぞ!」


男の手をつかんでいたのは、
機嫌が悪そうな上条だった。




……どうして?



透子が呆気にとられている間も、上条は透子を男から引き離そうと力を込める。



「痛ぇ! 何やお前ぇ、関係ないやつはすっこんどれや!」



しかし余程つかまれた手が痛いのか、男が反論する声に力がない。


それに対し上条の表情は、背筋が凍るほど冷たかった。


「そんなに通報されたいなら、今すぐしてやる。
刑務所の中でも同じセリフを吐けるなら、続ければいい」


「生意気なガキが!」


上条の言葉は淡々としていたが、単なる脅しではないことを感じとったのだろう。
男は負け惜しみを吐き捨て、さっさと逃げ去ってしまった。



ふらふらしている透子の肩を上条が支える。


「大丈夫ですか? 怪我はしてませんか?」


「は、はい。すみません」


驚きと恐怖で、うまく舌の根が噛み合わない。


差し出された上条の手にそっとつかまる。
透子の手は、まだかたかたと小さく震えていた。

< 25 / 307 >

この作品をシェア

pagetop