真夜中のパレード
驚いて顔をあげ、その人物を見てさらに驚愕した。
「いい加減にしろ。
あんたの行為は犯罪だ」
長い腕が酔っぱらいの男に伸び、
手首を強くひねりあげる。
「い、いてててて! こら、やめぇや!
お前、ふざけんじゃねぇぞ!」
男の手をつかんでいたのは、
機嫌が悪そうな上条だった。
……どうして?
透子が呆気にとられている間も、上条は透子を男から引き離そうと力を込める。
「痛ぇ! 何やお前ぇ、関係ないやつはすっこんどれや!」
しかし余程つかまれた手が痛いのか、男が反論する声に力がない。
それに対し上条の表情は、背筋が凍るほど冷たかった。
「そんなに通報されたいなら、今すぐしてやる。
刑務所の中でも同じセリフを吐けるなら、続ければいい」
「生意気なガキが!」
上条の言葉は淡々としていたが、単なる脅しではないことを感じとったのだろう。
男は負け惜しみを吐き捨て、さっさと逃げ去ってしまった。
ふらふらしている透子の肩を上条が支える。
「大丈夫ですか? 怪我はしてませんか?」
「は、はい。すみません」
驚きと恐怖で、うまく舌の根が噛み合わない。
差し出された上条の手にそっとつかまる。
透子の手は、まだかたかたと小さく震えていた。